「酒は百薬の長」は嘘!?

適量のお酒は身体に良いというのは皆さん聞いたことがあると思います。
「酒は百薬の長」ということわざもありますよね。
最近では、お酒は1滴も飲まない方が良いともいわれてきて、このことわざが否定されつつあります。
論文を見ながら一緒に考えていきましょう。
概要
そもそも「酒は百薬の長」ということわざは、飲酒量×死亡率を調査したデータや、虚血性心疾患と飲酒量のグラフにおけるJカーブ効果というデータなど、統計的なデータが元になっています。
元々は中国のことわざのようですが、飲酒量×死亡率のグラフやJカーブ効果が根拠となって今まで使われてきました。
飲酒量と疾病の関係を統計的に調査したデータがあります。
上のグラフは厚生労働省のサイトからの引用です。1)
aのグラフは消費量に応じて高血圧や高脂血症などの脂質異常症のリスクを示したグラフです。
アルコールの消費量に対いて比例してリスクが増えていくのが分かりますよね。
bのグラフは肝硬変のリスクを示しています。
初めは緩やかですが、ある点から急激にリスク増の指数関数の形をしています。
cの虚血性心疾患や脳梗塞、Ⅱ型糖尿病では、グラフがJの形をしており、非飲酒者より少量飲酒者の方がのリスクが低いという結果になっているのが分かります。
このように、Jカーブ効果とはグラフがアルファベットのJの形をすることから名づけられました。
なぜ酒は百薬の長ではない?
Jカーブは健康面における飲酒の利点を示していますが、多くの制限を伴うことを理解しておく必要があります。
まず既述の通り、 Jカーブが見られるのは総死亡といくつかの疾患に限られています 。
少量飲酒で総死亡のリスクが下がっているのは、虚血性心疾患の効果が大きく反映されていると考えられています。
上のグラフは厚生労働省のサイトからの引用です。2)
本文を見てみると
【グラフの「禁酒者」とは、以前に飲酒していたが何らかの理由で現在禁酒している者です。これらの者は健康問題を持つ者が多いと推定されます。】
との記述があります。
つまりは過去に高血圧や脂質異常症など、何らかの疾病を患い健康問題を持つ人は飲酒を控えるようにお医者さんから言われているわけですね。
いくつかの疾病でJカーブ効果が見られても、他の疾病ではお酒を飲むにつれてリスクが上がっていくので、飲まない方が安全というわけです。
さらに、最新の研究では、そもそも総死亡率のJカーブの存在に疑問を投げかける研究もあります。3)
下記のLANSETに掲載されている論文です。
医学雑誌LANCETによると
厚生労働省は1日のアルコールの摂取量を20gとしていますが、論文によると、1週間のアルコール摂取量は100g以下ににすべきとなっています。
つまり、1日のアルコール摂取量が15gと、厚生労働省のデータより低く設定されています。
下記の文字をコピーして検索すると、英文ですが上記の論文が調べられます。
Lancet.2018;391(10129):1513-1523
お酒にも良いところが?
ただ、お酒にも少なからず栄養成分が含まれています。
アルコールや糖質はもちろんその他の微量栄養素を見ていきましょう。
ちなみに、アルコール(エタノール)は1g当たり7kcalですが、消化にエネルギーを使用するため、±0という事で、エンプティカロリーなどと言われていたりします。
アデノシンも豊富で血行促進を促す
芋焼酎には抗酸化作用をもつアントシアニンが含まれている
蒸留酒の一種でプリン体ゼロ・低糖質で痛風の人には嬉しい
ポリフェノールの一種エラグ酸が強い抗酸化作用
蒸留酒の一種で糖質が少ない
白より赤の方が豊富
といったように、お酒にもカラダに良い栄養素があるのが確認できますね。
ただ、これらの微量に含まれる栄養素が与える健康効果よりも、アルコールの与える健康被害の方が大きいことは分かりますよね。
年齢を重ねるごとに危険が?
基本的には高齢になるにつれ、アルコールの代謝機能の低下、体内の水分量の低下、食事量の低下がみられることが多いです。
アルコールの代謝機能の低下によって、肝臓の疾患のリスク高くなります。
またアルコールの利尿作用も働き、もともと高齢者は体内の水分量が低い為、脱水状態にもなりやすいです。
食事量に関しては、アペリティフ効果といって、アルコールには食欲亢進作用があると言われていますが、およそ7%と微々たるものです。(もちろん個人差があります)
ちなみにお酒を飲むと特にビタミンB1が不足しがちになります。
アルコールを代謝する過程でビタミンB1が必要なのですが、糖質をエネルギーに換える際もビタミンB1が必要です。
前日のお酒を分解するのにビタミンB1を使ってしまい、翌日の朝にご飯やパンなどの糖質を摂っても、エネルギーに上手く変換できず、「朝からだるい・元気が出ない」なんてことが起こりやすくなります。
まとめ
さて色々解説してみましたが、いかがでしょうか。
個人的には、アルコールを摂取しないことに越したことはないが、飲むのであれば少量が良いという風に捉えています。
何はともあれ、Jカーブ効果があれど、飲み過ぎは病気の素です。
皆さんも飲み過ぎには注意してくださいね。
参考文献
1)2)
3)
Angela M Wood, Stephen Kaptoge, et al.
Risk thresholds for alcohol consumption: combined analysis of individual-participant data for 599 912 current drinkers in 83 prospective studies.
Lancet 391 : 1513–1523, 2018.
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